3期目最後の予算討論

3期目の最終本会議の今日、
予算に対しての討論を行いました。
コロナ禍という、かつてない状況の中での区政運営の中で
どんなことが行われてきて、今それがどのように予算に現れているのか。
みなさんが納めた税金です。
どうぞ、ご覧ください。

2023年度 予算討論

通告に従い 社会民主党  が
議案第1号
「令和5年度東京都板橋区一般会計予算」

議案第2号
「令和5年度東京都板橋区国民健康保険事業特別会計予算」

議案第3号
「令和5年度東京都板橋区介護保険事業特別会計予算」

議案第4号
「令和5年度東京都板橋区後期高齢者医療事業特別会計予算」

議案第5号
「令和5年度東京都板橋区東武東上線連続立体化事業特別会計予算」
に反対の立場から、

また、議案第25号
「令和5年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」
に賛成の立場から討論をいたします。

2023年度の板橋区の予算規模は一般会計で過去最大の23725000万円、
前年度よりも746000万円の増となりました。

一般会計及び4特別会計の合計でも、過去最高の35414200万円となります。
東京都からの特別区交付金の増加、区民住民税等における特別区税の増収が、
その主たる理由とされ、
特別区交付金は前年度比50億円、7%の増、
特別区税では前年度比25億円、5、4%の増 となっています。

また、5年ぶりの収支均衡予算となったため、財政調整基金からの繰り入れはなく、
そのため財政調整基金の残高は2022年度末で約276億円となり、
基金総額でも約1144億円と、初めて1000億円を超えました。
2019年度から2022年度までの年度末の財政調整基金の残高をみると、
コロナ禍の中でも約235億円から約276億円と約40億円積み増しされています。

板橋区の税収は上がっていますが、その大きな理由として納税義務者の増加が挙げられています。

板橋区の人口は2021年と2022年の1月1日現在の人口を基本にして、
全年齢の人口ではマイナス026と減少していますが、
このうち納税義務者の大部分を占める20歳以上の人口については
マイナス005と減少がわずかとなっています。

階層では2022年7月1日に国全体で行った課税状況調査によれば、
課税標準段階別の課税200万円以下のすべての段階で減少した一方で、 
とりわけ700万円超の1000万円以下の階層が1187パーセントの増、 
さらに1000万円超の階層が1199パーセントの増と格差が広がっていることが明らかとなっています。

コロナ関連の給付金の影響のほかに、マンションが多く建ち、
そこに新たな高所得者層の転入者が増えたことでの納税義務者の増加が、
理由の一つとの指摘がされています。

しかし、もともとこの板橋で暮らしてきた人の肌感覚からしたら、どうでしょうか。

コロナ禍により、仕事を失った人、住まいを失った人、
生活が困窮し大学や専門学校などを辞めた若者、夢を諦めた若者、
孤独に苦しむ子育て中の母親、そしてDV、子どもへの虐待の増加、等々
たくさんの方が苦しい思いをし、やっとここまできました。

昨年のウクライナへのロシア侵攻は、世界的な経済への影響も引き起こし、
それまで当たり前だった様々なものが不足し、物価やエネルギーがどんどん高騰しています。
私たちの暮らしは、すべては「平和が基本」であることを、改めて思います。

やっとコロナの感染者数も少なくなってきて、5月には5類の扱いにすると
政府は決定しましたが、それは人間の側の取り扱い、手続きの問題であり、
その日を境に、新型コロナウイルスが消えてなくなるわけではありません。

また、今年の春闘では、大手企業からは軒並み満額回答が出されていますが、
この日本の大部分は中小企業です。
そして板橋区は中小企業の街です。

私に届くのは、以前と同じ生活をしているのに物価や電気料などが高く、
生活が厳しいという声です。
給料、年金、生活保護費など、次の入金まで所持金が足りないという声が届きます。

補正予算総括質問でも取り上げましたが、
東京都は水道料金の滞納者に対し、今までは検針員が訪問し、
分割での支払いや福祉につなぐことで給水停止を回避してきたものを、
今年度からその業務を失くしてしまったために、
2021年度は年間で10、5万件だった給水停止が
2022年度上半期で9万件となっています。
水は命に直結します。

先ほどあげた数字は都内全体のものですが、
板橋区内でも安易に給水停止とされた世帯がないとは言えません。

さらに、コロナ禍の中、なんとか乗り越えられた理由の一つは、
社会福祉協議会の特例貸付があったからです。
国の貸付総額は1、4兆円超、既に今年の1月からその償還も始まっています。
これは給付ではなく、貸付であり、借金です。
住民税非課税の場合償還免除となりますが、それよりわずかでも上回ったら
償還することになります。
償還できず、免除を申請したケースが、既35%を上回っています。
なんとかその場をしのげはしても、お金を借りても困窮から抜け出せないでいる人が、
これだけいるという、紛れもない数字です。
支援が追い付いていません。

3月17日~19日に行われたNNN・読売新聞世論調査によれば、
岸田内閣に優先して取り組んで欲しい課題の1位は 「景気や雇用」で90%、
2位が「物価高対策」85%でした。
最近注目をされている少子化対策は74%で4位、年金など社会保障は78%で3位。
この結果からも、どれだけ人々の暮らしが厳しいのかを物語っているかが伺えます。

これが日本の、そして東京の、そして板橋区における現状です。

昨年の2021年度決算の審議の中で、
財政調整基金は「しばらく枯渇しない」という答弁がありました。
この時には、既に板橋区の財政は大丈夫だという確信があったからこその
ご答弁だったのだと、今改めて思います。

そして、2022年度は、特別区交付金や特別区民税、
地方消費税交付金の税収に加え、契約差金や実績減などによる余剰財源が生じ、
最終補正予算では 義務教育施設整備基金に96億円、
公共施設等整備基金に72億円積み立てたのちも、
財政調整基金は、昨年度の年度末よりも増加しています。

それならば、なぜ板橋区はその余剰財源や財政調整基金を
今、区民や中小企業に対してもっと使わないのでしょうか。
区民サービスに直結する職員に使わないのでしょうか。
私が、今回の予算案に対して、一番声を大にして言いたいのは、このことです。

一方には使える財源があり、他方には困っている区民がいます。
板橋区の「本来の目的」をもう一度思い出してください。

地方自治法 第1条の2 第1項
「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、
地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」

自治体は、福祉の主体です。
これこそが地方公共団体としての役割です。

生活を立て直そうとする区民、事業を立て直す、
新たに踏み出そうとする区内の事業者に対して、
どうしてもっと厚い支援をしようとしないのでしょうか。
そして、公契約条例で、労働者を守って行くことも忘れてはなりません。

「当初予算案プレス発表」の中には、
いたばしコミュニティフリッジ(仮称)や、
すべての小学校区に1か所を目標とする子ども食堂の立ち上げ支援、
ケアリーバーの応援プロジェクト、
ヤングケアラー支援のための実態調査、
医療的ケア児の受け入れ体制を構築すること、
スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの増員、
学校における居場所推進事業の拡充、
ゲートキーパーの周知や育成、等々
これまで要望してきたことが、やっと叶うと、私も嬉しく思うものも多々あり、感謝します。

しかし、例えばゲートキーパの周知や育成という政策は、
本当に全体の政策の中で活きているものとなっているのでしょうか。
なぜ、福祉事務所の窓口は区の職員ではなく、委託するのでしょうか。

ワンストップ窓口は大事です。
しかし、だからと言って委託にするのは本末転倒です。
窓口は相談を振り分けるだけではありません。
その時々で、どんな内容の質問が多いのかを知ることができる最先端の場所でもあります。

そして、まさにゲートキーパーが必要とされる場所でもあります。
福祉事務所に相談に来る人は、何らかの困難や困りごとを抱えている人であることは、
初めからわかっているのではありませんか。

窓口業務の人員が足りなければ、必要なのは、責任をもって職務を遂行できる
福祉事務所の正規の職員を増やすことです。

さらに、予算が通る前から、職員定数を決めてしまうことは、
事業の可能性を狭めることになると考えます。

区民の皆さんと一番近い、窓口業務、また現場の職員を削減することで、
直接区民の皆さんと話をする機会が少なくなることのデメリットをもっと想像すべきです。

さらに、清掃事業の正規職員の削減は災害時の活動、災害ごみの対応にも
大きな影響が出ることを肝に銘じることが必要です。

インターネット上での問い合わせができることは、便利なツールですが、
基本は区民のみなさんとの顔の見える関係であることを、改めて考えて欲しいと思います。

また委託化することで、官製ワーキングプアを生み出し、
板橋区自体のそれぞれの事業の継承も、そこで切れてしまいます。
専門性を持つ人を、きちんと区の職員として確保することを求めます。

さらに、会計年度任用職員のみなさんは、すでに長い年月その職場を支えてきた人たちです。
仕事が存在し、必要だからあるポジションです。
そして多くは女性です。
女性の貧困を生み出すような処遇、やりがいの搾取は、是非改善すべきです。

人に予算を付けていくことは、大事な政策であり、大切な予算の使い方であり、
それは区民サービスにつながることを、改めて指摘いたします。

2番目に、指摘するのは、子育て支援についてです。

義務教育は無償のはずなのに、実際は私費負担があり、
特に新学期に向けて、その私費負担の重さに困っているご家庭があります。
私は、かつて千葉で起きた、シングルマザーがお嬢さんと心中を図った事件を
忘れることができません。
裁判の中で明らかになったのは、その事件の発端は、制服を買うために
サラ金からお金を借りたことでした。

板橋区の場合、就学援助として、入学準備金は先に支払われ、
以前よりも金額も増えました。しかし、それでも十分とは言えません。

同じ公立中学校のはずなのに、なぜ制服などにかかる金額が学校ごとに大きく違うのか、
工夫すれば買わないでも済む教材などを、全員が買わないといけないのか。

さらに、杉並区は就学援助の認定基準額を生活保護基準額の1、2倍から1、3倍に上げて
対象者を拡大しています。
所得の格差が広がっている板橋区においても、このような基準額の見直しが必要であると考え、求めます。

忘れてはいけないのが、私費負担の集金をしているのが、
学校事務の会計年度任用職員の方たちです。
正規の職員ではないのに、学校全体の私費負担の分を集金すると、
扱う金額は1000万を超えることもあります。

様々な角度から見ても、改善が必要です。

また、23区中9区の自治体が、新年度から何らかの形で「給食の無償化」を始めます。
国への予算を求めつつ、板橋区も独自で工夫しながらできることがあるのではないでしょうか。
給食は、子どもたちの成長に欠かせません。
給食の無償化に加え、オーガニック野菜などを扱い、
子どもたちの成長、健康にも今以上にこだわるべきです。
福祉の視点からすると、世帯の所得などとの兼ね合いが出てきますが、
あくまでも「子育て支援」の切り口で取り組むべきです。

3番目に、デートDVを切り口として見た人権についてです。
来年度予算で、やっとデートDVの中学校での講習会への予算が付きました。
予算0から、5校分5万円は前進ですが、あまりに人権に対して無頓着ではありませんか。
アクティブプラン2025で、1年間5校という目標はあまりにも低すぎます。
それだけ板橋区のジェンダー問題、DV問題への無関心さが露呈していると思います。
1年間に区内すべての中学校で、デートDVの講習会の取り組みを行っている自治体が
すぐ隣にあります。

区立中学校の中には、学校で独自予算をつけても学ぶべき問題として、
独自に取り組んでいる学校もあります。

コロナ禍でどれだけDVが増えたのか、数字からも見えているはずです。
ダイバーシティ&インクルージョンを標榜する板橋区として、もっと積極的な取り組みを求めます。

また、弁護士会だけでなく、民間では永年デートDVの問題に取り組んできて、
ノウハウを積み重ねている団体もあります。
デートDVをメディアリテラシーからだけでなく、
ジェンダーの問題、人権の問題、そして同意の大切さなど、
中学生のうちにしっかり学ぶことが、大人になってからのDV予防にもつながります。
5年かけてすべての学校を、では 遅すぎることを改めて指摘致します。

4番目は、待ったなしの脱炭素社会の実現に向けての取り組みについてです。
昨年の1月に「ゼロカーボンいたばし2050」を表明し、気候非常事態を宣言した板橋区です。
スマートシティを推進し、持続可能な社会の構築のために
5つの決意をもって宣言したはずなのに、目玉の事業がこじんまりし過ぎではないでしょうか。

いたばし環境アクションポイントも、どこまで区民を巻き込み浸透するのか、
知っている人だけが得をする、では意味がありません。
また、区の施設に再生可能エネルギー100%の電力の計画導入拡大はたいへん評価しますが、
それをどう区民に伝え、見える化し、区民のみなさんの意識を変えていくのかが問われていきます。

そのためにも、ソーラーシェアリングなど、新しい見える取り組み、
そして関心を引く取り組みを、一歩ずつ始めてほしいと思います。
できない理由ではなく、どうしたらできるかに、チャレンジすることが必要です。

また、無作為抽出で選ばれた区民が、気候変動対策について議論をする
「気候市民会議」に向けて、SDGsで高い評価を受けている板橋区でも
設置に向けた検討をぜひ始めてほしいと思います。
住民との対話、住民の参加が必要です。

5番目は、新型コロナ感染症に関してです。
新型コロナワクチンの副反応の報告に関して、
予算の資料請求をしたところ、決算の資料請求での結果より
18人多い100人の方が厚労省に報告をあげていることがわかりました。
申告をしたくてもできない方がいらっしゃいますので、この人数は氷山の一角です。

またPMDAなど健康被害の申告をしている方が、18人。
前回より13人増えています。
また健康被害申告をしていない人でも、未回復や後遺症の方もいます。

国が決めたこととは言え、ワクチンの自治事務は板橋区です。
辛い思いをしているのは、板橋区民です。
仕事ができているのか、くらしが変わってしまっていないのか、
生活の質を上げるための支援など、板橋区には親身になって寄り添って欲しいと思います。

また、新型コロナウイルスに罹患して後遺症に苦しんでいる人もいます。
その方々への寄り添い、支援もお願いしたいと思います。

 

6番目は、まちづくりです。
「ブランド戦略」として板橋区はまちづくり、再開発を進めていますが、
再開発がブランドというのは、発想が古すぎるのではないでしょうか。

板橋区の税収が増えた理由の1つは、
マンションへの高所得者世帯の転入があげられています。
しかし、これは民間のマンションです。
来年度からは複数の再開発が動き出します。

出した予算は、数年かけて後で戻って来るとはいうものの、その予算は来年度だけで、
クロスポイント、ピッコロスクエア、上板橋、JR板橋駅前の全体で
50億3865万円と 無視できない金額であり、
他のことに優先して用意しなければならない金額となります。

また、再開発によって、それまで住んでいた人が、住み続けられないケースが出てきます。
板橋区は、「板橋区を愛せ」と言いつつ、
板橋区が好きで住んでいた人が住み続けることができない環境を生み出し、
代わりにタワーマンションを購入することができる新たな高所得者層を
再開発地域に呼び込んで、税収をあげることが目的なのでしょうか。

板橋区の魅力は、新しいものにしか見つけられないのでしょうか。
既に板橋区で暮らす一人ひとり、その暮らしや風景は
板橋区の魅力とはなりえないのでしょうか。
今あるものに目を向け、そこにプラスし、区民が自分の住む街をさらに好きになり、
誇りを持てるものこそが、真のブランド戦略であって、
住む人を入れ替えることではないと思います。

また、再開発事業の費用は、再開発全体に対しての割合ですので、
年度中でも変動します。
この物価などが高騰している中、どこまで費用がかかるのか、不安定材料となります。

タワーマンション計画よりも、今、板橋区に暮らしている区民への福祉、暮らしを支え、
中小企業を支えることが、まず板橋区がすべきことではないのでしょうか。

最後に、人間は誰でも年を取り、体の機能が低下します。
自然のことです。
だからこそ個人の責任ではなく、社会の責任として、
誰もが使える介護制度にしたはずですが、現実はそうなってはいません。
最初の介護保険の理念を、どう取り戻すかが課題です。

さらに、年金生活となり収入が限られ、年々年金が少なくなっているにも関わらず、
消費税は収入にかかわらず10%、物価やエネルギーはどんどん高騰していきます。

また、国民健康保険は、加入している方が、個人商店が多く入っていた昔とは
違ってきています。
セーフティネットの役割が求められています。
子育て世帯には、経済的にも重くのしかかっています。
未就学児にかかる均等割り保険料が軽減とはなっても、
それだけではまだまだ不十分と考えます。

板橋区には、旧統一協会に対して、新年度もアンテナを高くし、
敏感に対応することを強く求め、カルト2世の方への支援や取り組みをお願いいたします。

 

以上、
議案第1号~議案第5号には反対し、

議案第25号
「令和5年度東京都板橋区一般会計予算に対する修正動議」
に対しては、どれも必要な事業と考え、賛成を致します。

 

最後に今年度をもちまして退職なさいます
久保田福祉部長、岩田資源環境部長、糸久土木部長をはじめ、
149名のご退職なさいます皆様には、板橋区のために長年にわたり
多大なご尽力を賜りましたこと、心から感謝を申し上げます。
ますますのご健勝をお祈り申し上げます。

以上で、社会民主党 五十嵐の討論を終わります。
ご清聴、ありがとうございました。

   

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