先日、偶然見た夕方のテレビニュース。
陸上自衛隊高等工科学校を特集していました。
そこで密着取材を受けていた少年は、とても素直で優しそうな少年でした。
母子家庭で、学校から支給される月9万8500円のお金から、母親にプレゼントを送ろうとしていました。
学校の勉強の中では、いわゆる普通の高校生と同じ勉強以外に、武器を手にし、実際地面に這いつくばって銃を撃ったり、という様子が出ていました。
日本には徴兵制はないと言いますが、この特集をみて「経済的徴兵制」という言葉が頭に浮かびました。
今年の1月の調べでは、板橋区では3つの区立中学校が、陸上自衛隊練馬駐屯地に職業体験に行っています。
体験内容は「整列行進などを行う基本教練やロープワークなど」とのことです。
「職業の選択の自由」は基本としてありますが、今までも自衛隊への職業体験は、保護者や区民の方たちから疑問の声がありました。
区立中学校で自衛隊に職業体験に行くのは、希望するお子さんのみとのこと。そして、保護者の同意を得るとのこと。また、職業体験の行き先は、校長の裁量に任されているそうです。
また、教育委員会では、職業体験の場所として、問題はないという認識でした。
しかし、昨年の9月19日、安保法制が国会を通過し、今年の3月末には、いよいよ施行となりました。
今までの専守防衛の自衛隊ではなく、地球の裏側まで行って、自国ではなくアメリカを守るためにも戦える集団的自衛権をもつ自衛隊となってしまいました。
この秋からは、南スーダンのPKOに駆けつけ警護の任務も加わりました。
今までとは、自衛隊のあり方そのものが変わったのです。根本が変わったにもかかわらず、その部分について教育委員会は判断を避けているように思います。
そして、この危険な任務は、国会で決めた年長者が行うのではなく、若い自衛隊員が担います。
南スーダンに派遣される自衛隊員の様子をテレビで見ましたが、親子の別れ、それは自分が親であり、そして子どもでもある自衛隊員の姿と その家族でした。
さて、ここで子どもに関して国際法を見てみると、ジュネーブ諸条約第一追加議定書第77条2項(注1)、子どもの権利条約38条3項(注2)は、15歳未満の子どもを軍隊に採用することを明文で禁止しています(注3)。
注1、「紛争当事者は、十五歳未満の児童が敵対行為に直接参加しないようすべての実行可能な措置をとるものとし、特に、これらの児童を自国の軍隊に採用することを差し控える。紛争当事者は、十五歳以上十八歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるように努める。」
注2、「契約国は、15歳未満のものを自国の軍隊に採用することを差し控えるものとする、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める。」
注3、なお日本国は、「武力紛争における関与から児童を一層保護することが必要であることを考慮」して制定された、「武力紛争子どもの関与に関する子どもの権利に関する条約の選択議定書」にも批准しています。
井筒高雄氏(元陸上自衛隊 noレンジャー隊員)によれば、陸上自衛隊の横須賀・武山駐屯地にある「陸上自衛隊高等工科学校」は、2008年までは「少年工科学校」という名称で3等陸士という階級もあり、自衛官としての員数にも入れていたそうです。
しかし、国際的な少年兵の定義の変更に伴い、2009年から名称変更をし、3等陸士を廃止し、自衛隊の員数からも外し、自衛官という身分ではなく「生徒」としています。
テレビのニュースでも言っていたように、学校の授業料は無料、反対に生徒手当として、毎月9万8500円(2016年4月現在)、年2回の期末手当が支払われています。
現在、非正規雇用の人も増え、格差も広がり、仕事をしていても期末手当がでない人も多くいる中、「生徒」でありながら、期末手当まで出ています。これをどう受け止めるでしょうか。
http://www.mod.go.jp/gsdf/yt_sch/index.html 「陸上自衛隊高等工科学校HP」
また、「子どもの権利条約」第1条では、児童を18歳未満と定義しています。
同条約38条第2項で「締約国は15歳未満の者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとる」、第3項では「締約国は、15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控えるものとし、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める」としています。
防衛省は国の防衛をするための省庁であり、自衛隊は防衛出動という名の、日本を守るための戦闘訓練をしています。(消防庁や消防団とは明らかに任務が違います。)
東日本大震災、熊本地震など自衛隊員の尊い働きが目に焼き付き 今も忘れられず、感謝の念は絶えませんが、災害対応は自衛隊本来の任務ではないと、井筒氏は言います。
主たる任務の遂行に支障を生じない限度において、災害派遣やPKOに派遣することができるのだそうです。
ですから、かつて第二次世界大戦中にあった三河地震など大きな地震では、東日本大震災などで自衛隊が行ったような救護活動は、当時ほとんどなされていないとのことです。
自衛隊の中学・高校卒業見込み者への職業体験という名の情報提供、また自衛隊から届く案内についても、「実行可能な措置をとる」という国際法の基に、努力義務がなされているのかを改めて考え、子どもたちを守るために、政治や教育の場はもちろん、私たち一人ひとりも改めて考えることが、今、私たちに求められていると思います。
小さな子どもも見る夕方のニュースで陸上自衛隊高等工科学校を特集し、実際に銃を持っての訓練風景を流す一方で、母子家庭の母親を助けるためにという美談にしてしまうテレビ局は、この国際法について理解しているのでしょうか。