宇都宮健児弁護士からのメッセージ

宇都宮健児 弁護士よりメッセージをいただきました。
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ありがとうございます。

 

五十嵐やすこ板橋区議の発言に対する抗議ついて
2016.4.7 弁護士 宇都宮健児

1.議会における「自由闊達な議論」の保障は、民主主義社会における基本である。議会における議員の発言を問題にして、議会外の団体を使って議員に発言の撤回を迫ることなどあってはならないことである。反対の意見があれば、議会の中で堂々と反論すれば良いのである。
今回防衛省・自衛隊の外郭団体に抗議をするように促したのが都議会議員ということであるが、議員であれば何よりも議会における「自由な議論」が保障されるよう努力すべき立場であるのに、議会外の団体に抗議させ発言の撤回をせまることは言語道断である。

2.戦前は、特に1931年9月の満州事変以降、軍部に対する批判ができにくい社会となり、軍部も議会を軽視するようになった。1938年の帝国議会における国家総動員法の審議において説明にあたっていた陸軍中佐が野次を飛ばした国会議員に対し「黙れ!」と威嚇した事件などは、軍による議会軽視を象徴する事件である。このようなことが軍部の暴走を招き、侵略戦争を拡大させ、太平洋戦争につき進み、日本社会を破綻させるとともに日本はもちろんアジア諸国においても多大な犠牲者を生む結果となった。再び、戦前のような社会にしてはならないのである。そのためにも、今回のような動きを他の地方議会に波及させないことが肝要である。

3.自衛隊は災害派遣がなされることがあるが、主要な任務は国の防衛である。自衛隊は、日本を守る防衛活動のために戦闘訓練をしているのであるが、戦闘訓練とは「人を殺す訓練」であるから、五十嵐やすこ区議の発言は、真実をいっているのであって、間違ったことはいっていないのである。

4.職業体験として中学生を自衛隊に行かせることは、15歳未満の子どもを軍隊に採用することを明文で禁止している「子どもの権利条約」や「ジュネーブ諸条約第1追加議定書」の趣旨に反するものである。

5.なお、昨年の9月19日に設立し、今年の3月29日に施行された安保法制は、歴代内閣が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、外国軍隊の武力行使との一体化に当たるとして禁じてきた範囲にまで後方支援を拡大し、国連平和維持活動(PKO)に従事している自衛隊に駆け付け警護等の新たな任務と任務遂行のための武器使用権限を付与すること等を認めている。この安保法制は、第9条の定める恒久平和主義に反するとともに、憲法改正手続を経ずに一内閣の閣議決定による憲法解釈の変更に基づき法案を作成し、国会で可決されたものであり、実質的に憲法を改変するものとして立憲主義に反するものである。
このような憲法違反の安保法制が施行され、わが国が集団的自衛権の行使としての武力行使をした場合はもちろん、PKOや米軍等の武器等防護による武器使用や後方支援の拡大に踏み出せば、外国軍隊の武力行使と一体視され、わが国が相手国からの攻撃の対象になる可能性も高まる。また、海外にPKOとして派遣されている自衛隊に対し、駆け付け警護等の新たな任務と、任務遂行のための武器使用権限が付与されるならば、自衛隊員が任務遂行中に武装勢力などの攻撃を受け、それに反撃することで「戦闘行為」となり、「殺し」、「殺される」という極めて危険な事態に至るおそれがある。したがって、自衛隊員や自衛隊員の家族のためにも、安保法制の廃止を求めていく必要があると考える。