「いのちのとりで裁判」に関する陳情の討論をしました

通告に従い、議案第104号
「国がいのちのとりで裁判(生活保護基準引き下げ訴訟)最高裁判決に従い、生活保護行政の抜本的見直しを
求める陳情」

第1項、第2項は賛成し、第3項に対しては反対の立場より、
委員会決定第1項、2項「否決」には反対し、第3項「否決」には賛成の討論を致します。

 

本陳情1項目は、いのちのとりで裁判(生活保護基準引き下げ訴訟)の最高裁判決に従い、
全ての生活保護利用者への謝罪と、本件引下げ前の基準による保護費と差額支給等、
必要な被害回復措置を直ちに講じるよう、板橋区議会から国に対して強く意見することを求めるものです。
2項目は、生活保護バッシングの再来を許さない『生活保障法』の制定等の措置を速やかに講じることや、
国に対し、強く意見することを求めるものです。

生活保護基準については、1984年以降、おおむね5年に1回見直しが行われています。
2012年、衆院選で政権に復帰した自民党は生活保護費の引き下げを公約に掲げました。
その後、2013年に生活保護基準が改定され、全国29都道府県で
1000人を超える原告が立ち上がり、訴訟が起こりました。
そして、今年の6月27日、最高裁判所で「国の措置は違法である」との判決がありました。
2013年の改定内容においては、例えば、デフレ調整を行うにあたって、
手続上や内容などの問題が指摘されており、パーシェ算式とラスパイレス算式という異なる算式を使用するなど、
禁じ手とも言われる手法を使ってまで引き下げを行っています。
また、専門家に諮ることもしなかったため、最高裁は「判断と手続きに過誤欠落があった」とし、
11年にわたる裁判は結論づけられました。

憲法25条「全ての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
とあるにもかかわらず、厚労省自らが違法な措置を行い、またその状態が長く続けられてきたことになります。

さらに、今回、愛知訴訟と大阪訴訟が最高裁で勝訴したにもかかわらず、
その後何ら改善されていないどころか、国は謝罪する態度もなく、専門委員会を新たに設置するという、
敗訴したとは思えない対応をしています。
そのため勝訴した原告団がその委員会の委員に対し、たびたび東京に来て説明をしなければならない、
さらに傍聴さえ許されないという、異常な事態となっています。
被害を受けた生活保護利用者へ真摯に向き合おうとする姿勢が伺えないとの指摘も、過言ではありません。
これは司法の軽視であり、立憲主義をないがしろにするものであると指摘せざるをえません。

例えば、生活保護受給者に対し、誤った支給があった場合、また後日それが判明した場合、
返還請求が行われます。誤って支給したお金は回収しても、
最高裁により違法と判断され、本来受給者が受け取るべきお金が
10年以上にも渡り受け取ることができない状態にある、それが現状です。
 
本来、生活保護は社会を底支えするセーフティネットです。
しかしながら、かつて国会議員の発言に端を発し、生活保護バッシングが広がり、
ひどい差別がありました。
そのため、本来受給すべき人が生活保護の申請を拒んでしまうなど、
憲法に保障された権利を行使することができない人を多く生み出し、
未だ根深い社会問題となっています。厚生労働省のホームページの冒頭に
「生活保護の申請は国民の権利です。
生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、
ためらわずにご相談ください」と書くまでに至りましたが、
生活が苦しいと訴え相談に訪れる人の中には、まだまだ生活保護を躊躇してしまう人が多くいます。
生活保護は権利であり、誤った認識による生活保護バッシングを二度と繰り返してはなりません。

 

第3項
「板橋区が本判決に従い、改めて生活保護利用者の人権の視点から生活保護行政を総点検してください。」については、
私は、コロナ禍の前から生活保護申請の同行などで、板橋区の福祉事務所での対応を拝見し、話を直に聞いております。
様々な職員がいらっしゃることは事実ですが、中には、その言葉のあたたかさ、優しさで、
私の方が胸がいっぱいになったこともあります。
また困窮支援の活動をしている方々からも、様子を伺っております。
板橋区の福祉事務所は、23区の中でも、ほかの自治体のお手本になるような取り組みをし、
支援者側からも信頼を得ているという認識を、私はしております。
しかし、女性相談員ひとりが受け持つ区民の人数や、ケースワーカー一人が受け持つ人数など、
まったく課題がない訳ではありません。
さらに、私も様々な相談を受ける中で、複合的な課題を抱えている方が増えていること、
特に、精神的な課題を抱えている方が増えていることを実感しております。
その意味でも、福祉事務所としても改善すべきことがあることは否定しません。
しかしながら、「総点検」をする必要はなく、板橋区の福祉事務所の生活保護行政は正しく機能し、
役割を果たしていると考えます。

よって議案第104号「国がいのちのとりで裁判(生活保護基準引き下げ訴訟)最高裁判決に従い、
生活保護行政の抜本的見直しを求める陳情」
第1項、第2項は可決、第3項に対しては否決されるものと考え
委員会決定
第1項、第2項「否決」には反対し、第3項「否決」には賛成をし、私の討論と致します。

  

 

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