2024-9-24 一般質問(調整中)1、学校以外の場で学ぶ子のための支援と教育の中立性について

9月24日、一般質問を致しました。全5項目です。

1,学校以外の場で学ぶ子のための支援と教育の中立性について
2,マイナ保険証について
3,災害と持続可能な事業運営について
4,小学生の朝の居場所について
5,学校校舎における温度調査について

項目ごとにご報告を致します。
なお、掲載している議事録はまだ調整中のものです。
決定稿ではございませんので、現段階ではご参考に留めますよう、ご了承ください。
以下

通告に従い、続いて五十嵐やす子が質問いたします。

1、学校以外の場で学ぶ子のための支援と教育の中立性について。

8月5日の株式会社スダチのプレスリリースに端を発しての一連の報道や調査に対し、驚きとともに、教育の板橋とは何なのか、子どもの意見表明は言葉の上だけのものなのかと愕然とし、今に至ります。今回のことは、板橋区民のみならず全国的な関心を集め、多くの方がショックを受け、心を痛めていること、また、今回取り上げる質問は、教育委員会の方針や対応に対してであり、民間企業のスダチ社の営業方針や取組みに対してのものではないことを初めに申し上げ、質問に入ります。

1)プレスリリースで板橋区教育委員会との連携を発表した株式会社スダチは、不登校を3週間で解決をうたう民間企業です。その企業と口頭のみで、正式な連携ではなくても、試行するという判断を板橋区教育委員会は下したことになります。また、スダチ社の事業内容との整合性について、取材に対し、「登校できるようになるからではなく、保護者へのアプローチの選択肢になると思った。方針と矛盾するとは考えなかった」と答えたとのことです。確固とした教育委員会の方針があるならば、それが無料のお試しであっても、自己矛盾にすぐに気がつくのが当然であり、今回の判断には至らなかったはずです。

2023年4月改定の不登校対応ガイドラインにおいて、不登校対応方針を「不登校児童・生徒への支援は、『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、将来、児童・生徒が豊かな人生を送れるよう、社会的に自立することを目指すものである」と自ら決定しています。2019年第4回定例会一般質問で、2019年10月25日の文科省の通知を受けて私は質問をし、その中でも、学校に戻ること、通うことだけが目標ではないことなどの確認を行い、答弁でもガイドラインと同じ見解をいただいております。私は、板橋区教育委員会はきちんと理解し、取り組んでいると安心してきました。それがいつの間にか、当時の答弁や、昨年改定したガイドラインと全く異なる判断と選択をするに至っていました。教育委員会として、いつから考えが変わってしまったのか、お答え願います。

2)次に、9月5日、「板橋区教育委員会事務局の株式会社スダチとの一連の経緯と不登校対応の方針について」として、教育委員会より公式な報告が板橋区のホームページ上にて公表されました。その中で、1つの学校では9枚のチラシ配布をしたとのことです。また、ヒアリングによると、これは教職員会議の場において、株式会社スダチがプレゼンをした学校であるとのことです。9枚のチラシは、1人の教師が配布したものか、それとも複数の教師が配布したものでしょうか。このことは大きな意味を持ちますので、お答えをお願いします。プレゼンを聞いた教師の中から、再登校のみを目標にすることについてガイドラインの方針と異なると指摘する教師はいなかったのでしょうか。もしいなかったとすれば、板橋区の不登校対応ガイドラインや文科省の通知が現場の教職員に全く徹底されていないことになり、極めて問題です。この実態への教育委員会の見解をお聞かせください。また、教育委員会及び現場の教師に対して、改めて不登校支援のガイドラインを周知徹底してほしいと思いますが、いかがでしょうか。また、2つの小学校での校長や現場の教師は、その後どのように現場として対策を取っているのでしょうか。お答えください。

3)次に、再登校は命の危険につながるという認識について伺います。スダチ社では、「サポーター」と呼ばれるスタッフが保護者にカウンセリングを行い、サポーターではなく、親が子どもに対してサポーターのアドバイスの下、対応して、再登校を目指すシステムとのことです。そのサポーターの募集を見ると、営業としての求人です。板橋区はスダチ社の適性をチェックした上で試行しようとしていたわけではないとのことですが、適性も調査、確認せず接触し、口頭での話を進めていることは本当に怖いことだと思います。心身の病を癒やすのは医師免許を持つ医師です。心の傷は見えなくても、とても深かったり広くつながっていたり複雑です。だからこそ、心理士など資格を持っている人が対応することが求められてきたのではないでしょうか。資格の有無など、なぜ今回はその確認が行われなかったのでしょうか。今後の対応はどのようにするのか、お答えください。

4)精神科医の松本俊彦氏によれば、自殺で亡くなってしまった不登校経験者のうち約75%が学校に再登校していたとのことです。過剰適応の状態となり逃げ場がなくなり、心身ともに追い詰められてしまうことや、長期的な視点に立った支援の必要性が、医師や支援団体などの専門家によって指摘されています。子どもの権利条約にはアドボケイト、子どもの意見表明権があります。その子どもの権利として認められている子どもの声を聞かず、親の側からの一方的な情報を基にした親子関係への介入によって、子どもの精神状態をさらに追い詰める状況を生み出す可能性があった、そしてそれを顧みない状況が、たとえ一時的にでも板橋区の教育現場の中にあったということになります。再登校のみを目標にしないことがガイドラインで方針となった理由がここにあります。今回の板橋区教育委員会の試行は、子どもの命に関わる危険性さえもあったことを強く指摘いたします。このことについての見解を伺います。

5)教育委員会がスダチ社と接点を持ち、話を聞き、2つの小学校を紹介するという、第三者から見たら、まさに実態として連携するに至った経緯に関して、不自然だと指摘されていることがあります。教育委員会がなぜスダチ社の話を聞くようになったかという紹介者について、当事者の方々による、誰もが見ることができるネット上への投稿が広く知られているにもかかわらず、公表された経緯には一切言及されていないことについてです。2023年の10月には教育支援センター所長が、2024年5月には教育委員会指導室長と教育支援センター所長が一緒に話を聞き、その場にはほかの人もいたことが明らかとなっています。そのことに全く触れないのは、かえって信頼を失う状況を招いていることを指摘いたします。この点について改めて説明を求めます。

6)区が公表した経緯を見ると、5月1日から15日までの約2週間であっという間に話が進んでおり、その翌日の16日、翌々日の17日には、2つの小学校をスダチ社に紹介しています。その進み方はあまりにも早く、不自然で異常であると多くの方が指摘しています。また、公表されている経緯の2ページ目を見ると、わざわざプロセスにかぎ括弧がついています。このような書き方は普通、何かを引用するようなときに使われます。これは何を意味するのか説明を求めます。さらに、これだけ早く進むにはシナリオがあったのではと指摘する声もあります。同じような時期にスダチ社から特定の国会議員への働きかけや、その国会議員が議連座長となっている教育関連の協議会の総会にてスダチ代表がプレゼンをし、そのことを受けて、座長である国会議員が、板橋区の不登校の現状などに言及しているという客観的事実があります。今回、ガイドラインを短時間で踏み越えた事実は明確であり、そこに何らかの力が働いたのではないかと多くの方々が疑問の声を上げています。

板橋区の教育委員会の信頼のためにも、教育委員会に対して特定の団体や議員などからの働きかけがあったのか、確認をしたいと思います。また、それに関連して、教育の中立性は大丈夫なのかと、今、板橋区の教育委員会は問われています。改めて教育委員会の中立性と教育の中立性の考えをここでしっかりと伝えていくことが大切です。教育の中立性について、板橋区教育委員会の考えや今後への対策をお聞かせください。

7)3週間で不登校を解決するプログラムをうたうスダチ社に区内小学校を紹介することは、すなわち不登校支援のガイドラインを独断で変更することです。この判断に教育長への報告や教育長の判断はあったのか、また、どうして今回のような判断となったのか、教育委員会の中でどのように話合い、どのように報告して、このお試しが決まったのか、お答えを求めます。

8)経緯について公表された文書3ページの2「本件における問題について」において、「細部にわたって提案の内容や進め方を確認することが十分ではなかったことに大きな原因があったと考えております」とあります。では、確認が十分であったら、そのまま進めてもよかったのでしょうか。本当の問題は、スダチ社の目指すものと区教委の目指すものでは違うのに、一部のニーズにとらわれ、その1点だけで話に乗ってしまうという教育委員会の倫理性の問題ではないでしょうか。特に低学年の子どもは、自分の気持ちをうまく言葉で表現できません。意見表明すら難しいからこそ、教育委員会がその子どもを守らなければならないのです。それにもかかわらず、ニーズを最優先してしまったことが一番の問題ではないでしょうか。改めて考えてほしいと思いますが、教育委員会では、繰り返さないためにどのように対策を考えているのか、お答えください。

また、親が子どもに働きかけコントロールするという考え方は、親学につながるという指摘もあります。日本は子どもの権利条約を批准しており、子どもの意見表明を当たり前とすること、子どもの意見を聞く環境をどう担保するかを第一とし、教育委員会や教育現場の教師に周知徹底していくことが大切です。改めて、子どもの権利条約を教育委員会や学校現場で学び直すことを求めますが、いかがでしょうか。

9)「不登校」という言葉は日本にのみ存在する概念で、登校することを基本としての言葉となっています。板橋区のガイドラインでは、「不登校を問題行動と判断してはならない」とあるにもかかわらず、負のイメージを受けます。だからこそ、保護者の方なども登校することをただ一つの目標と勘違いしてしまうのではないでしょうか。宮城県の教育委員会では、「不登校」という言葉を使わないようにしていると聞きます。代わりに、「学校以外の場で学ぶ子ども」という言葉などを使用しています。このような配慮、考え方が大切だと思いますが、板橋区の教育委員会はどのように考えるのか、お答え願います。

10)天津わかしお学校に会派で視察に伺いました。先生方が一人ひとりと時間をかけて向き合っていて、子どもたちの表情も輝いていました。健康面だけでなく、さまざまな課題を抱える子どもたちの支援としても有効であると強く感じました。また、一人ひとりの大切な居場所ともなっています。また、板橋区にはフレンドセンターもあります。フレンドセンターにも視察に伺いましたが、先生たちのご尽力の大きさを感じました。現在は天津わかしお学校に赴任していた経験を持つ先生もいらっしゃり、その経験を活かしながら、子どもたちの対応をしている事例もあると聞きました。しかし、個人の力に頼るのではなく、普遍的なものとすることが必要です。板橋区にはこのように、既にすばらしい特色のある教育施設があります。子どもの選択がさらに広がり、多様な学び、多様な居場所をつくることこそが、子どもを中心とした教育であると考えます。学校以外の場で学ぶ子どもたちへの支援の場として、天津わかしお学校、フレンドセンターの連携にさらに力を入れ、在籍校とも連携を深めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。お答え願います。

11)一方、課題は残ります。低学年の子どもたちの受入れが、天津わかしお学校もフレンドセンターにもありません。今、板橋区は低学年の子どもたちで、学校以外の場での学びを必要としているお子さんがふえている実態があります。児童館や元児童館だった場所の活用も視野に入れつつ、早急に対策を練る時期にあると思いますが、いかがでしょうか。

12)最後に、2022年の小・中学校の自殺者数は514人で過去最多となり、こんなにも多くの子どもが自殺するのは日本のみとのことです。2学期が始まる9月1日周辺が断トツに多く、また、4月の新学期が始まった頃が突出しています。学校は命をかけてまで行くところではないことの周知徹底を早急に進めることが必要です。

「命の浮き輪」という言葉をご存じでしょうか。子どもたちは夜中にゲームをします。それが続き、昼夜逆転してしまうお子さんもいます。それを見て、保護者は焦ります。子どもたちは自分が負の評価をされてしまう日中から夜の時間に逃げているとのことです。このような子どもの心理を保護者が知ること一つで心持ちが変わるのではないでしょうか。また、さまざまな進路があること、また、それぞれに合った多様な学びの場の情報を知らせることなど、保護者と情報を共有し、苦しみに寄り添うことで、子どもたちを見守る気持ちや姿勢にゆとりが生まれ、それが子どもたちにも伝わるのではないでしょうか。広く子どもを持つ人に対し、教育委員会や教師が多様な学びや学校以外の場で学ぶことの理解を深めるために寄り添い、理解を進める取組みを早急に進めるべきと考えます。教育委員会の見解を求めます。

この項の質問は以上です。

 

〔教育長(長沼 豊)登壇〕

○教育長(長沼 豊)  それでは、五十嵐やす子議員からの一般質問のうち、教育に関する質問にお答えします。

初めに、学校以外の場で学ぶ子のための支援と教育の中立性についてのご質問です。不登校対応方針についてです。区の不登校対応は、登校するという結果のみを目標にするのではなく、将来児童・生徒が豊かな人生を送れるよう社会的に自立することを目指しています。教育委員会ではこれまでもこの対応方針に基づき、不登校児童・生徒人一人ひとりに寄り添った対応が実現されるよう努めており、この方針は現在も変わっていません。今後も不登校児童・生徒一人ひとりに寄り添った支援の実現に向けて全力で努めていきます。

次に、スダチ社に対する教員の捉え方と今後の対応についてです。スダチ社のチラシについては、対象となる不登校児童が複数の学年、学級にわたるため、複数の教員が配布しましたが、不登校対応ガイドラインを理解していないわけではありません。教育委員会は、不登校対応ガイドラインに基づいた取組みを実施するよう区立学校に周知徹底を図っており、各校からは効果があった支援方法等の報告を受けています。今回対象となった小学校2校においても、不登校対応ガイドラインの方針や取組み内容にのっとった対応を従前より行っています。

次に、アドバイスを行う者の確認についてです。スダチ社が業務を行うに当たり、国家資格等の要件が必要となるものではなく、アドバイスを行う者についても、適した資質を持つ者を分野を問わず採用して当たらせると聞いていましたが、安全性を確認するまでには至りませんでした。今後は児童・生徒に寄り添うことを第一としながら、新規事業や提案に取り組む際は、教育的効果や影響、適性等について、さまざまな立場から多角的な視点で検討をしていきます。

次に、思考の危険性についてです。教育委員会では、学校に登校するという結果のみを目標にしているわけではなく、不登校に対するさまざまなアプローチの必要性を感じており、保護者への支援は不登校対応の選択肢の一つとして考えていました。保護者へのアプローチについて、スダチ社の取組みが不登校の全ての事例に有効であるとは考えていませんでしたが、成果を聞く中で、本区の事例にも適応し得るものがあればとの思いで話を進めたものでした。

次に、スダチ社から説明を受けたときの同席者についてです。令和5年10月にスダチ社から説明を聴取したときは、区議会議員からの紹介が契機となりましたが、その後、令和6年5月に再度説明の場を設けた際は、教育委員会事務局指導室から依頼したものです。本件については、実質的に指導室が主体となり進めたものであることから、教育委員会事務局の動きを中心に捉え、ホームページに掲載しました。

次に、教育の中立性についてです。ホームページで示した資料の記述において、かぎ括弧をつけたことについては、内容を明確にする意図でした。スダチ社を学校現場につなぐことについて、特定の団体や議員からの働きかけがあった事実はなく、教育委員会事務局が主体となり進めたものです。これまでも教育基本法の理念に基づき、教育の中立性を確保してきたところであり、今後も法の理念を踏まえながら、不登校対応をはじめ教育施策を責任を持って進めていきます。

次に、教育長への報告と判断についてです。本件については、教育委員会事務局所管部署から概括的な報告を受けたのみであり、判断には至りませんでした。しかしながら、区の不登校対応方針について、区民の皆様、関係の皆様にご不安を抱かせてしまったことについて、教育長としておわび申し上げます。

次に、今後の対策と子どもの権利についてです。事業を検討、実施する際には、さまざまな立場から多角的な視点で検討するとともに、後に重要なものとなり得る事案については、広く情報共有を図りながら、より慎重に協議を進めていくよう、管理職に対し強く指導しました。なお、子どもの権利条約については、児童・生徒に寄り添うことを第一とする立場であることから、その理念や内容について理解を深めていきます。

次に、「不登校」という言葉を使わないことについてです。「不登校」という言葉が、学校以外の場所で学ぶことがよくないことと伝わることは本意ではありません。このような配慮は重要であると考えるため、区では不登校対応ガイドラインで、不登校を問題行動と判断してはならないと従前から示しています。

次に、居場所と在籍校との連携についてです。天津わかしお学校は区立の特別支援学校のため、前の在籍校と情報を共有しながら、一人ひとりに合った対応をしています。また、フレンドセンターでは、児童・生徒の活動の様子を常に在籍校と共有し、連携を図っています。今後もさらに居場所の充実を図るとともに、フレンドセンターのほか、児童・生徒一人ひとりの支援を行う関係機関が連携を密にすることで、より丁寧な支援ができるように取り組んでいきます。

次に、低学年の子どもの学校以外の場についてです。板橋区に限らず、学校以外の学びの場を必要とする低学年の児童が増加傾向であることは認識しています。現在、区立小・中学校において、教室に入りづらいなどの児童・生徒が安心して過ごせる校内の教室以外の居場所づくりを進めており、低学年の児童が利用する例もあります。低学年の児童については、区内にさまざまな種類の居場所を設置し、周知していますが、まずは学校内の居場所における一人ひとりに寄り添った支援の充実が重要と考えています。

次に、学校以外の場で学ぶことについてです。区立小・中学校では、長期休業明け前後に不安や悩みを抱える子どもが増加する傾向があり、気になる様子が見られる場合には、学校や相談機関に相談するよう周知しています。教育委員会では、不登校の児童・生徒への支援は、学校に登校するという結果のみを目標にするのではなく、児童・生徒が社会的に自立することを目指すものとしています。安心して過ごせる校内の教室以外の居場所やフレンドセンターなど、学校以外の多様な場で学ぶことができることを改めて周知しながら、不安を抱える児童・生徒に寄り添っていきます。

ここまでの質問に対する答弁は以上です。

  

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