2023年 第三回定例会 一般質問
1、気候変動への対策と持続可能な事業継続のために
「東京は真夏日80日」との報道があった9月12日、
西清掃事務所の皆さまのご協力を頂き、清掃の現場の視察を致しました。
午前中のまだ涼しい時間帯の視察。
終了後、帰宅する午後の陽の光は刺すようで、気温も上り、とても暑くなっていました。
このところ毎年「この夏は猛暑だ、酷暑だ」という中、
今年は、8月が31日間連続 真夏日、9月12日までで真夏日80日という、
とりわけ異常な暑さが、今も続いています。
報道でも暑さ対策が取り上げられ、民間の事業者では空調ベストや空調服、
休憩時間の徹底、体温調整のための保冷剤や飲み物など、
酷暑の中で働く人たちへの働く環境を整える様々な配慮が必要と繰り返されています。
板橋区の職員でも、屋外が日々の現場となり、従事している方たちがいます。
その中の一つが、清掃事業です。
板橋区は23区で週に3回燃えるごみの収集がある2区の1つです。
来年は板橋区だけになるようです。
区民の生活は日々、清掃職員の皆さんに支えられています。
特に暑い夏は、生ものは腐りやすく私たちの生活に直結するものです。
コロナ禍においてテレワークが実施される中でも、
「清掃事業は住民生活に欠かすことができない事業」
と位置付けられ、感染の不安やリスクを抱えながらも、
区内の公衆衛生、区民の衛生的な生活環境を守り続けてきました。
区民の皆さんから、感謝のお手紙が届くなどしていたことは、記憶に新しいところです。
そのような清掃事業に携わる職員の方々ですが、職務を果たすために努力をなさっているとも聞きます。
しかし、生身の人間です。
スーパーマンでも鉄腕アトムでもありません。
今回は気候危機が指摘されている中で、
いかに安全に持続可能な環境で、持続可能な事業を行うかの、
特徴的なものとして清掃事業を取り上げ、質問を致します。
①初めに、今年の酷暑の中、区は現場に対し、どのような対応をしてきたのでしょうか。
そもそも外出を控えるように、また外での運動は控えるようにと呼び掛けている中でのハードな仕事です。
しっかりとした対策がないまま、平常業務を行うことについてどのようにお考えでしょうか。
清掃職員が熱中症で救急車で救急搬送されています。
また熱中症の症状を訴える人が相次いもでいるとも伺っています。
現場ではどのくらいの職員が体調を崩しているのでしょうか。
区は把握をしているのでしょうか。
また、現場からは、どのような声が上がっているのか、
お答え願います。
気象庁から発表されている気温よりも、現場の実際の気温はさらに高いものとなります。
アスファルトの照り返し、車の後方での作業のため、清掃車の排熱、排ガスも浴び、
さらに労働環境は過酷な状態となります。
汗にまみれ、埃にまみれながらも、清掃職員の皆さんは、
私たちの生活を日々支えて下さっています。
西清掃事務所では、今年の7月下旬からわかっているだけでも
7人が熱中症の症状を起こし、救急車で緊急搬送された職員もいるそうです。
屋外で作業している民間の方たちは、空調付きの作業服を当たり前のように着用しています。
視察でも拝見しましたが、
板橋区の清掃職員は、暑い中を小走りで移動しながら、腰を曲げ、
かがんでごみを持ち上げ、それを清掃車に積み込むという作業を、
細かい間隔で指定されている集積所毎に、延々と繰り返し、大変キツイ作業を繰り返しています。
それも大変早いスピードで、私は追いつききれませんでした。
その作業をしている職員たちの作業服は、普通の作業着です。
今年、布地を変えたとはいえ、どのくらいの効果があるのか、疑問です。
民間が積極的かつ迅速に熱中症対策に取り組んでいる中、
板橋区が目に見えるような対策を何もしていないことに、私は危機感を感じます。
そもそも、「暑さ対策」については、清掃労働組合が区長あてに要求した
「2023年度の板橋区予算編成に係る要求書」などの中でも、何度も要求しています。
2020年6月には、既に環境省から
「ごみ処理作業時等における熱中症対策について」の通達が出ており、
この時点でファン付き作業着などにも言及がなされています。
このような経緯の中、昨年以上に異常な酷暑の中でも、
区長は現場の職員の健康、そして命の危険について考えなかったのでしょうか。
早急に有効な手を打つべきではないでしょうか。
やっと支給されたネッククーラーも全員分ありません。
労働者は、取り換えのきくネジや歯車ではなく、人間です。
②板橋区は、本来、民間のお手本になるべきものです。
働く者の使用責任をどのように考えているのでしょうか。
お答え願います。
③様々な暑さ対策用グッズを現場で用いる以外に、
生身の人間である職員の疲労を回復するための対策は、
持続可能な事業継続のために、重要な対策です。
暑いだけでも体力を奪われるのに、
その中で毎日毎日ハードな作業をこなすのが清掃の現場です。
一日だけのことではありません。
作業する職員が早く上がれるよう、また休みをとれるよう、
正規の職員の増員を図ることが必要だと考えます。
さらに、今年度は新人を3人採用していますが、
過酷すぎる現場では、途中で辞めてしまう人がでてしまう懸念もあります。
持続可能な作業のための対策が必要であり、来年度の採用に活かすべきと考えます。
この2点について、区はどのように考えているのか。
お答え願います。
④区内のごみ収集では、高齢者の個別対応など、丁寧な仕事をしており、評価を致します。
7月にJIAMが開催する社会保障・社会福祉の2泊3日の研修に参加して参りました。
日本の多くの自治体が既に人口減少に転じている中、
2040年の時点でも、人口が減少するどころか増加している
稀有な自治体の一つが板橋区であるとのデータがありました。
2019年改定の板橋区人口ビジョンでは、
区が参考にしている国立社会法人・人口問題研究所のデータも2040年がピークとなり、
その後わずかながら減少に転じています。
また、高齢化率はこの先も上がると予想されています。
区内の高齢化が進めば、ごみの収集現場での高齢者対策も
さらに必要性が高まることが予想され、
今以上に、ごみ収集の時間も、職員の人数も、体力も必要となります。
「いたばしナンバーワンプラン2025の重点戦略の目指すビジョン」でもある
「誰一人取り残さないSDGs」の精神を進めるならば、
正規の清掃職員の人員を増やすことが必要不可欠と考えます。
区長の見解を求めます。
⑤来年度からはプラスチックごみの収集が始まり、
板橋区はプラスチックごみの事業は委託とのことです。
新しい事業を初めから委託したことはなく、心配をしています。
委託先のサポートを正規職員がすることになるのではと懸念します。
「委託」として経費を払う以上、
サポートや指導は正規職員の業務ではありません。
委託する場合、管理監督業務は本庁という計画で進んでいるようですが、
現実には清掃事務所の電話番号しかないため、現場に問い合わせが来たり、
また、本庁には作業のための車も何もないのですから、
実質、清掃事務所の職員が行くことになるのではないですか。
初めからサポート業務にあたる正規職員の人数などを確保し
サポート業務も明確化すべきではと思いますが、区の見解をお聞かせください。
⑥次に、私は今年度の職員定数条例にも、2023年度予算にも反対をしています。
2021年度決算の審議の中で、財政調整基金はしばらく枯渇しないとの答弁があり、
2022年度の最終補正予算では、義務教育施設整備基金に96億円、公共施設等整備基金に72億円積み立て、
そして今回の補正予算の中では、2022年度の歳計剰余額がさらに約81億5200万円、
その中から剰余金約48億4000万円を財政調整基金に積み立てるとの説明がありました。
最終的な財政調整基金は約312億8000万円となります。
地方自治法第1条の2第1項
「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、
地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とあります。
区民と直接かかわる最先端にいる現場の職員が働く環境を守ることは、
区民サービスの質を高め、住民の福祉の増進に直結します。
この秋も例年に比べ気温が高いとの予報で、このところも連日真夏日となっています。
来年も夏はやってきます。毎年様々な災害も増えています。
災害のときに、現場に出て行って業務をこなすのも正規の清掃職員であることは、
言うまでもないことです。
もっと職員を大事にすべきです。
公務災害で職員が命を落とす危険があることを指摘します。
何事も予防原則が基本です。
この異常な気象の中で、区民サービスの質の担保を確保し、現場の職員の命と体調を守るためにも、
「予算がない」ではなく、新たに「補正予算」を組んででも、早急に対応をするように求めます。
この夏、日本各地で熱中症で命を落とした人がたくさんいます。
清掃の現場はまさに命がけの仕事になっています。
清掃事業には特殊勤務手当があり、
コロナ禍では練馬区が独自でその特殊勤務手当を増額したと伺っています。
板橋ではしていません。
この間の清掃職員の勤務状況を鑑み、
特殊勤務手当の増額を考えるべきです。見解を伺います。
また、これまでも暑さ対策を求め続けてきた現場職員の声に、区は答えないのですか?区の見解を求めます。
⑦台風対策
年々台風の勢力が強くなり、被害も甚大なものになっています。
台風6号では、ごみ出しに外に出た方が、転倒しケガをしたという報道もありました。
出したごみが飛散して、新たな危険を生み出す可能性もあります。
トラックが横転する様子が報道される等、清掃車の事故も考えられる事態となります。
日頃から体を鍛えている清掃職員の皆さんも生身の人間です。
災害用の防護服もありません。
例えば、大阪市では、台風時の収集にあたり、
タイムラインにのっとったり、風速が一定の数値を超えたら
収集しない等のルールを作っています。
収集するか否かの判断を現場にさせることは、酷です。
区の職員の安全の担保は、使用者が責任をもって判断し、責任を負うべきです。
現場での自己責任にしてはいけません。
また、台風時のごみ収集への区民の理解や、周知が必要になります。
気候変動が顕著になっている今、
早急にルール作りに取り組むことが必要と考えますが、区長の見解をお伺いいたします。
⑧降雪対策について
暑い夏の後の冬は大雪になると言われています。
雪に不慣れな東京で、雪道を清掃車が走ることは、
いくら清掃のドライバーの腕が良くても、様々な危険が生じます。
特に、板橋区は23区で一番崖が多い自治体です。
坂道が多いということです。
雪の中、狭い坂道での生活道に入っていくことは難しいのではないでしょうか。
また、高齢者の転倒などは、たいへん危険です。
寝たきりや、認知症にもつながる危険性があります。
降雪時においても、現状と課題を踏まえて、
早急にルール作りをすべきと考えます。見解を伺います。
⑨災害対策
夜中に大雨が降った時など、清掃の職員は水が出やすい地域を経験から知っていることもあり、
先に車を出してチェックをすると聞きます。
それは、その日の収集業務を円滑に進めるためです。
貴重な情報です。
災害が起きた現場の状況をいち早く庁内で共有することは、
限られた人員で効率よく動くという点でも重要です。
道路のチェックは土木事務所などもしていると思いますが、
清掃事務所との連携はどのようになっているのでしょうか。
清掃の現場職員が、清掃事務所に情報をあげる時に、
ダイレクトで他とも共有できるシステムや仕組みがあれば、
リアルタイムに生の情報を得ることができます。
是非、連携をと思いますが、見解をお聞きいたします。
⑩「技能労務職員の法的位置付け」と清掃職員の関係についてお伺いします。
総務省によると「単純労務職員の範囲は解釈上、昭和27年9月30日に失効した
『単純な労務に雇用される一般職員に属する地方公務員の範囲を定める政令』(昭和26年政令第25号)で
定められていた範囲と一致するもの」とされています。
そして、この中に清掃職員は位置付けられています。
しかし、清掃職員は日常業務として、ルール違反のごみが出されていた場合、
公権力の行使を伴う住民指導を行っています。
具体的には、ルール違反のごみ袋を開封調査し、排出者が特定できたらそのお宅を訪問し、
文章投函あるいは直接対話をすることによって、排出ルールを守るようお願いする、というものです。
さらに、「ふれあい指導班」が設置されており、
収集現場では対応しきれない区民からの相談・要望・苦情などに対して、現場を訪問し、
区民と直接対話をすることによって解決をはかっています。
また「車付雇上車」現場の管理監督業務も行い、保育園や幼稚園、小学校への出前講座も行っています。
清掃事務所に電話等によって寄せられる区民からの相談・要望・苦情などに対応しているのも、
単純労務職員と位置付けられている清掃職員です。
これが実態です。
清掃事業は民間委託化が進められていますが、
単純労務としてのごみ収集作業がさらに委託化されて行けば、
清掃職員の業務は先に上げたような単純労務とは言えない業務に特化されていくことが予想されます。
ここに気候変動の中での作業環境の厳しさが加わります。
1)「技能労務職員の法的位置付け」の範疇からは益々乖離していくと思われますが、
この事についてどのようにお考えでしょうか。
2)また、単純労務であるという理由から、
業務職給料表が行政職給料表より低く抑えられているのであれば、
もはやその前提条件は崩れているのではないでしょうか。
この点について、高い区民サービスのために年末の31日までごみ収集をするなど、
他区の清掃事業よりも、清掃職員の協力を頂いている板橋区として、
区長はどのようにお考えでしょうか。
見解をお伺いいたします。
⑪ 板橋区の人口は、まだ増える予想です。
人口が増えることで、職員もこれから増えることが予想されますが、
例えば今日取り上げた清掃職員についてはどのようにお考えでしょうか。
非正規職員を増やした場合、区民サービス、災害時など、責任を伴う職務を考えると、
特に大きな違いがでると予測しますが、その担保はどのように考えているのでしょうか。
区長の見解をお聞きいたします。
以上、板橋区が職員の人権や命をどう考え守るのか、です。
一方では財調が初の300億円を上回ろうとする時、
「予算がない」と区民のために働く職員を切り捨てるのか否かです。
心ある対応を強く望みます。
2、人権について
関東大震災から今年で100年となりました。
防災について語り継ぐ一方で、もう一つ忘れてはならないことがあります。
関東大震災の混乱に乗じ、関東各地で、放火や井戸に毒を投げ入れたという流言飛語が広まり、
多くの朝鮮人、またはそれと疑われた人、中国人、
また、社会主義者や無政府主義者といった市民が虐殺されたという、加害の歴史についてです。
今、この加害の歴史に関連して、改めて関東大震災の混乱に乗じた歴史事実を振り返り、
繰り返さないという思いが広がっています。
デマによる集団ヒステリー状態による混乱は、今の時代でも起きないとは言えません。
二度と繰り返してはなりません。
板橋区教育委員会では、小・中学校において人権教育をどのように行っているのでしょうか。
人の命、人権を守るために、区民に向けの人権啓発活動が大切になると思いますが、
板橋区ではどのように行っていくでしょうか。お聞かせください。